就職活動では企業にメールや電話をする場面は多いですよね。
その際に「貴社(きしゃ)」と「御社(おんしゃ)」という言葉を見たり、聞いたりすることはありませんか?
しかし、
のように、普段使わない言葉なだけに迷っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、今日からでも使える例文を交えて、「貴社」と「御社」の使い方をご紹介します。
貴社と御社は使う場面によって変える
貴社と御社はどちらも相手の会社のことを意味する敬称です。
しかし、これらの言葉は使う場面によって使い分けなければなりません。
それぞれどのような場面で使うのでしょうか。
貴社は文のやりとりで使う
貴社は書き言葉として使います。
つまり、
- メールで企業に連絡をするとき
- エントリーシートや履歴書を記入するとき
など、企業と文字でやりとりをするときに使うということですね。
貴社を使った例文
では、実際にどのように貴社を使うのかを例文を見てみましょう。
本日は面接のお時間をいただき、ありがとうございました。
〇〇様のお話を伺い、あらためて貴社への志望度が高まりました。
このように、文で企業とやりとりをするときに相手の企業を指す言葉としては貴社を使います。
御社は会話のときに使う
御社は話し言葉として使います。
つまり、
- 説明会や面接の際に人事や先輩社員の方と話すとき
- 企業に直接伺う際に、受付の人と話すとき
など、企業の人と話す場面では御社を使います。
また、電話で企業の方と話すときも御社を使います。対面でなくても話す場面では御社を使うと覚えておきましょう。
御社を使った例文
では、御社を使った例文で使い方を確認しましょう。
貴社や御社を使わない9つの場面
ここまで、貴社と御社の使い方をお話ししました。
しかし、相手の企業のことを話すときに貴社や御社を使えない場面があるんです。
- どのような場面なのか
- どのように言えばいいのか
具体例を交えてご紹介します。
銀行・信用金庫
貴社や御社を使うことのできない代表例が銀行です。
銀行の場合は「貴行(きこう)」や「御行(おんこう)」と言います。
貴行が書き言葉、御行が話し言葉でやりとりする際に使います。
書き言葉のときは「貴」をつける、話し言葉のときは「御」をつける
このようにと覚えると間違えにくいですね。
それでは、使い方を例文で確認しましょう。
銀行や信用金庫では貴社や御社ではなく貴行や御行を使いますが、例文見てわかるように話し方や話す内容は変わらないですよね。
これからご紹介する貴社、御社を使わない例でも、使う言葉が違うだけで話し方は変わりませんので、例文は省略して言葉についてだけお話しします。
市役所や官公庁
市役所は書き言葉では「貴所(きしょ)」、話し言葉では「御所(おんしょ)」を使います。
また、官公庁とは文部科学省や法務省のような〇〇省、デジタル庁や気象庁のような〇〇庁、国税局や法務局のような〇〇局のことを指します。
それぞれどのような言葉を使うのか確認しましょう。
- 〇〇省
書き言葉:貴省(きしょう)
話し言葉:御省(おんしょう)
- 〇〇庁
書き言葉:貴庁(きちょう)
話し言葉:御庁(おんちょう)
- 〇〇局
書き言葉:貴局(ききょく)
話し言葉:御局(おんきょく)
いずれも最初の文字を、書き言葉なら「貴」、話し言葉なら「御」に変えるだけですね。
今ご紹介したように表現するのがマナーとして正しいのですが、実際は貴省や貴庁を使わずに、国土交通省や気象庁のように正式名称を使われることもあるようです。
病院
病院宛にメールや電話で連絡する際にも「〇〇病院」とするのではなく、書き言葉か話し言葉なのかによって表現を変える必要があります。
書き言葉のときは「貴院(きいん)」、話し言葉では「御院(おんいん)」と表しましょう。
病院のなかでも〇〇クリニックのように小規模な医療機関もありますよね。
その場合は「貴クリニック」や「御クリニック」としてもよいのですが、あまり聞き慣れない言葉ではありませんか?。
「貴施設」や「御施設」を代用しても失礼にはなりませんので、場面に応じて使い分けましょう。
財団法人や社会法人
財団法人や社会法人のような〇〇法人に対しても、原則として貴社や御社は使いません。
書き言葉のときは「貴法人(きほうじん)」、話し言葉では「御法人(おんほうじん)」を使います。
ただし、会社説明会や面接などでは実際の法人名称を使うこともあります。
また、「財団法人〇〇協会」の場合は、「貴法人・御法人」と「貴会(きかい)・御会(おんかい)」のどちらを使用してもよいことになっています。
NPO
NPOの正式名称は「特定非営利活動法人」です、
つまり、NPOも法人ですので、財団法人や社会法人でご紹介したように書き言葉では「貴法人」、話し言葉では「御法人」を使用します。
法律事務所
法律事務所の場合ですが、今までの流れだと、書き言葉では「貴所(きしょ)」あるいは「貴事務所(きじむしょ)」、話し言葉では「御事務所(おんじむしょ)」や「御所(おんしょ)」となりそうですよね。
しかし、実際には「貴社」や「御社」でも問題ないようです。
学校
学校や学校法人に対しても貴社や御社は使いません。
高校入試などで「貴校の〇〇という校風があっていると思ったからです。」のように志願理由書で書いたことありませんか。
このように書き言葉では「貴校(きこう)」を使いますし、話し言葉では「御校(おんこう)」を使用します。
同じ教育機関でも大学の場合は、「貴学(きがく)」や「御大学(おんだいがく)」とすることに注意。
話し言葉では「大」を書くんですね。
学校名が〇〇学院の場合は「貴学院(きがくいん)」や「御学院(おんがくいん)」、〇〇学園の場合は「貴学園(きがくえん)」や「御学園(おんがくえん)」を使用します。
法人経営ではないお店
相手が個人経営のお店の場合、書き言葉では「貴店(きてん)」を使用します。
しかし、チェーン店のような法人経営の店舗では「貴社」を使用することに注意しましょう。
応募しようとしているお店が個人経営のお店なのか、法人経営なのかも確認してみてください。
そして、話し言葉は「御店」とするのかと思いきや……
「御店」は面接など口頭で使用しても問題はありませんが、元々は奉公人や出入りの商人が商店を敬って使用していた言葉なので現代では一般的ではないようです。
話し言葉では「こちらのお店で」「そちらのお店で」などと表現しても問題はありません。
組合
組合は、書き言葉では「貴組合(きくみあい)」、話し言葉では「御組合(おんくみあい)」とします。
「御組合」は「御組(おんそ)」とする場合もありますが、あまりメジャーではないようです。
また、信用組合は金融機関であっても、組合ですので「貴行」や「御行」を使用せずに「貴組合」や「御組合」とすることに注意です。
貴社と御社を間違えてしまったら
貴社と御社の使い方や例文、貴社と御社を使えない場面での表現をご紹介しました。
と思う方もいるかもしれません。
そして、就活をすでに始めている方のなかには、
と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、そんな方々の不安を解消できるお話をしていきます。
貴社と御社を間違えても不採用にはならない
貴社と御社を間違えても不採用に直結はしません。採用する立場の方になったつもりで考えてみてください。
「〇〇様」と言われるのが正しい場面で「〇〇さん」と言われたからといって、「この学生は敬語ができないから不採用」と思う人間がいるでしょうか。
なかなかいないと思いませんか。
ですので、貴社と御社という言葉遣いを間違えても深刻に考える必要はありません。
しかし、正しい言葉遣いが身についてだけで企業の人には、
「この学生は真面目そうだな」
「とても誠実そうだな」
と評価してもらうことができますので、身につけておけばプラスしかありません。
ぜひ、就活を機に敬語もマスターしておきましょう。
言葉遣いだけではなく心遣いも大事
「言葉遣いにも気をつけてみようかな」と思うようになったのではないでしょうか。
しかし、言葉遣い以外に大事なことがあります。
それは、心遣い。
もちろん言葉遣いも大事ですが、言葉遣いに気をつけるあまりあなたの伝えたいことが伝わらなくては本末転倒。
面接って緊張しますよね。
緊張した場面ではいくら練習しても言い間違えてしまうことはきっとあると思います。
しかし、たとえ緊張して間違えたとしても誠意をもって伝えようとすれば、面接官にあなたの想いはきっと伝わるはず。
言葉遣いに気を取られるのではなく心遣いも大切に。
とはいえ、本番を想定して話す練習はたくさんしておきましょう。
「当社」と「弊社」は使用しない
「当社(とうしゃ)」と「弊社(へいしゃ)」という言葉を聞いたことありませんか。
貴社や御社と似ていて紛らわしいですよね。
と思われる方、心配しなくて大丈夫です。
就活においてはこれらの言葉を学生のみなさんが使うことはありません。
当社と弊社はどちらも自分の会社を指す言葉です。
2つの言葉の違いについて、例文を交えながらご紹介します。
当社の意味
「当社」は「社内」に対して使う言葉で、次の例文のように同じ車内の人同士で自分の会社を表現したり、自分の会社と同業他社を比較したりするときに使用します。
例文を見てみましょう。
・当社のシェアは業界1位です。
弊社の意味
「弊社」は自分の会社をへりくだって表現する際に使用する言葉です。社外の相手に対して「私たちの会社は」という意味で使います。
例文を見てみましょう。
・何かご不明点がございましたら、何なりと弊社スタッフにお問い合わせください。
・弊社のサービスをご紹介いたします。
よく誤解されるのは、相手の企業のことを弊社と言ってしまったり、自社内の会話で弊社を使ってしまったりすることです。
みなさんは会社に属していないため、まだ当社や弊社という言葉を使用することはないと思いますが、いずれ使う言葉ですので頭の片隅に入れておきましょう。
「様」と「御中」の使い分けにも注意
メールや文書を企業に送る際に、宛名に「様」や「御中」のような敬称を使用します。
これらの違いも押さえておきましょう。
「様」は特定の個人に使う
「様」は特定の個人に対して使う敬称です。
どのように使うのか、例を見ていきましょう。
株式会社〇〇 人事部 田中和子様
このように相手の企業のなかで「××部署に所属している〇〇さん」と特定できる場合は「様」を使用します。
企業宛に郵送するときは「御中」
一方で、企業のなかで特定の個人ではなく、組織の誰かに対して使用する敬称が「御中」です。
気をつけていただきたいのが、企業などの組織に対して使うものが「御中」という誤解。
「御中」は「組織のなかで名前はわからないけど組織のなかのどなたへ」という意味があります。
なかには、
という方もいるのではないでしょうか。
その場合は、「株式会社〇〇 採用ご担当者様」と書くか、「株式会社〇〇 採用担当御中」と書きましょう。
まとめ:貴社はESやメールで、御社は面接や電話で使用するもの
いかがでしたか?
敬称1つとってみても、場面によって言葉が違ったり、使う相手によって言葉が違ったり、気をつけることが多いですよね。
また、すでにお伝えしましたが、言葉遣いだけではなく心遣いも大切です。
もし間違えてしまったら、「申し訳ありません」と謝れば大丈夫です。
相手に対して誠意を持ってコミュニケーションを取ることを第一に考えましょう。