『推し、燃ゆ』を読んで、「学生時代に力を入れたこと」を考えてみた

学生時代に力を入れたこと。

 

それなりにアルバイトや試験勉強、サークル活動は頑張ったが、エントリーシートに特別書けるような話はひとつもない。

 

「学生時代は、アルバイトリーダーとして店舗の売り上げをエリア1位に押し上げました」
「サークルのリーダーをやっていました」
「大学3年からは研究室のゼミ長として、研究に注力しました」

 

通称「ガクチカ」(=学生時代に力を入れたこと)の例文を調べても、どうしてこうも、似たり寄ったりでつまらない内容ばかりが出てくるんだろうか。

 

わたしは、アルバイトリーダーはやったことがないし、サークルは1年で辞めた。大学の授業はギリギリ単位を取得する程度で、ゼミも適当に選んだ。

 

みんなが書いているのような輝かしい「ガクチカ」を、わたしは持っていない。

 

大学受験を頑張ったわたしは、受験後の燃え尽きで何もがんばれず、大学入学後は目標もなく過ごしてきた。人に誇れるようなことなんて何もない学生生活で、いざ就活をはじめてから後悔した。

 

「ガクチカに書けそうなこと、やっとけばよかったな...」

 

そんなわたしにも、時間と労力を全てかけて頑張ったことはある。

 

それは、いわゆる“アイドルの追っかけ”だ。

 

追っかけというと聞こえはあまり良くないかもしれないが、その頃のわたしは、ほんとうに毎日一生懸命だった。

 

大学の授業に出席したあとは、走って公演の会場まで向かった。追っかけにはお金がかかる。資金調達のため、5時には起きてアルバイトに向かい、大学の授業後にまた閉店までアルバイトする生活。

 

なんと、労働時間が250時間を超え、月収が25万円以上になった月もあった。

 

どうしてこんなに、誰よりも必死で「頑張ったこと」はエントリーシートに書けないのだろう。就活中のわたしはずっと考えていた。

『推し、燃ゆ』は、大学時代のわたしにそっくりだった。

2021年頭、SNSで話題になった、芥川賞受賞作である『推し、燃ゆ』。

Twitterの、いわゆる“おたく界隈”のタイムラインでは、「自分のことが書かれているみたいで苦しくなった」「話題になっていたこの本、わたしも読みました!」というツイートを見ない日はないくらいだった。

 

例にも漏れず、わたしも気になってしまい、『推し、燃ゆ』を手にとった。

 

「推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな。」

 

「一時間働くと生写真が一枚買える、二時間働くとCDが一枚買える、一万円稼いだらチケット一枚になる。」

 

大学時代、アイドルを追いかけることが人生の中心だったわたしのことが書かれているみたいで、読んでいて懐かしい気持ちになった。

 

普段の生活のつまらなさ、追っかけのためのアルバイトだけは頑張れるところ、そして、現場(“推し”の出る舞台の会場)に行くときだけ、異常に出てくる活力。

 

たった10時間働くだけで、会いに行ける。来月のシフト、もう少しだけ増やそうかな。

 

推しの魔法にかかって、またアルバイトを頑張って、そしてまた現場に向かう。そのような生活が、楽しくて、苦しくて、でもやっぱり楽しかった。

 

「もう一度あの生活がしたい」とは正直思わないけれど、わたしにとって大切な「学生時代に力を入れた」思い出のひとつである。

 

人は、自分のために必死で頑張れるほど強くはないらしい。欲しいバッグやゲームのために、寝る間を惜しんで働くことはできない。

 

でも、誰かのためになると思えば、頑張れる。だからこそ、わたしは、オタクってすごいと思うし、あのときのわたしはすごかった。

 

オタクは、あくまで“推しのために頑張る”というスタンスである人が多い。

わたしの知り合いには、舞台に通うお金を集めるために寝ずに働き続け、入院してしまった人もいる。過労にも関わらず彼女は幸福そうで、「もっと働きたい」と言っていた。

 

世間から見ると「ヤバい奴」かもしれないが、わたしは、彼女のことを尊敬していた。社会人にもなって、自分が倒れるまで真剣に、何かに向かって頑張れる人は少ないと思う。

 

「学生時代に頑張ったこと」

好きなアイドルに会うために働き、好きなアイドルに会うためにおしゃれをする。アイドルを追いかけることが世界の中心だったわたしにとって、学生時代最も頑張ったことは、“オタ活”だ。

 

就活中、「アイドルの追っかけを頑張っていたなんて、そんなことはガクチカに書けない」と思いながら、アルバイトの中から少ないエピソードを絞り出し、なんとかエントリーシートの300字を埋めていた。

でもあるとき思い立って、内容を変えた。「アイドルの追っかけ」とまでは書けなかったが、わたしが頑張ったことを素直に書いてみた。

私が大学時代に最も頑張ったことは、アルバイトです。

趣味のために貯金がしたいと思った私は、大学の長期休暇を利用して30連勤に挑戦し、1ヶ月で25万円ほど稼ぐことができました。30連勤と聞くと大変に思うかもしれませんが、私はその1ヶ月を楽しんでいました。

私がこの連勤を楽しむことができた理由はふたつです。

①「〇月までにいくら貯める」という明確な目標があったこと

②日々のアルバイトの中で、「今日は売り上げ目標を120%達成させよう」「今日は締め作業を20分以内に終わらせよう」といった小さな目標をたて、その達成を楽しんでいたこと

私はこの経験を通して、目標をたてそれに向かう努力を楽しむことの大切さを学びました。

このガクチカが、人事から見て何点だったのかは、分からない。このガクチカを書いたエントリーシートが、書類選考を通ったのか落ちたのかもあまり覚えていない。

 

けど、自分が頑張ってきたことを書けたわたしは、どこかスッキリしていた。

 

もしわたしが、人事として学生のエントリーシートを見ることがあったら、「学生時代に最も頑張ったことは、アイドルの追っかけです。」というガクチカには惹かれてしまうと思う。少なくとも、世にある例文に寄せて書いただけの個性がないガクチカ...かつてのわたしが書いていたものよりは、ずっとずっと魅力的なガクチカであることは確かだ。

何かに本気で夢中になれる人は強い。

“オタク”と呼ばれる人間は、目標に向かってただひたすらに走る能力に長けている。

“オタク”と呼ばれる人間が、一つのことに対して真剣に、夢中になることができるのは、就活で語ってもいい長所だと思う。

 

その「夢中になってひたすら走る能力」が仕事に活かせたら、あなたは活躍できる立派な社会人になれるはずだから。

 

『推し、燃ゆ』では、推しの炎上と引退をきっかけに、主人公が自分の人生を見つめ直している。“推し”に夢中な人は、なかなか自分のことを考え直す機会はないものだ。

 

だから、これを読んでいるあなたは、「就活」をきっかけに自分の人生について一度考えてみて欲しい。

 

大学時代、アイドルに夢中だったわたしは、いまは仕事に夢中な社会人になった。

昼も夜も好きなアイドルのことばかり考えていたわたしも、今は「どうすれば多くの人を幸せにできるか」を考えている。

 

就活を通して、趣味を優先させられる自由な会社を選ぶのもひとつだし、夢中になれる仕事を見つけて、わたしのように「仕事のオタク」になるのもひとつの道だろう。

 

どちらを選ぶのもあなたの自由だが、何かに夢中になれるところはあなたの立派な才能であることは、ぜひ覚えておいて欲しい。

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